裸のCFO - 10000時間でプロになる。

某メーカー系スタートアップでサプライチェーン・マネジメントを担当している著者が「10000時間の法則」を真に受けて、“事業を創れるCFO”になるまでの10000時間を記録するブログです。世界を目指す研究開発型のプロダクト系ベンチャーを興すのが夢。技術や市場動向から、経営戦略やマーケティング、ファイナンス、それからVCについても書きます。お問い合わせは、hadakano.cfo[at]gmail.comまで。

【幸運は準備された心に宿る】イノベーション戦略の論理- 確率の経営とは何か

【幸運は準備された心に宿る】イノベーション戦略の論理- 確率の経営とは何か 

【裸のCFO -  164.0 時間】A : 9.5 時間 B : 18.0 時間 C : 81.0 時間 D : 55.5 時間

目次

第1章 確率の経営―イノベーション確率最大化基準

第2章 イノベーション確率とは

第3章 イノベーションドメインの設定―探索領域を決定する

第4章 探索のデザイン―探索の頻度と精度を高める

第5章 探索の焦点を管理する

第6章 イノベーション戦略の実行―活用から構築へ

 

「幸運は準備された心に宿る」

冒頭から出てきたこの言葉、なかなかいいなぁと思いながら読みつつ、本書の結論はその「準備」がイノベーション戦略であり、イノベーション確率を高めることにあるわけです。

理にかなっていないことで成功するのは、理にかなったことで失敗するよりも致命的だ

以前いた会社は、いわゆる○○ベンチャーの雄と言われる、業界では名の知れた企業でした。

5年くらい前に絶頂期が来て、そこからの右肩下がり、低空飛行。結果論でしかないのかもしれませんが、「理にかなっていないことで成功」したことの反動であったような。

「勝てば官軍」になりがちな組織においては、どうしても短期的な結果に注視しがち。そして「勝った」ことの成功体験を幻想のように持ってしまう。

そうした「結果合理性」から「プロセス合理性」への展開を訴えるために、本書は「イノベーション確率最大化基準」を掲げるわけです。

 

「確率なんて、事業ではあてにならないでしょ?不確実なのだから」

 

どこからかこんなことも聞こえてきそうですが、本書は完全に「開き直っています」。主観的な確率評価でいいんだ、と。それしかイノベーション戦略を策定し、実行する策はないんだ、と。

そして、そのイノベーション確率を高めるには、野球のバッターではないけれど「頻度」と「精度」を高めることが重要で、そのための思考ツールがいくつか紹介されています。

 

技術の階層

企業が保有する技術を、技術優位へのインパクト x 競争優位へのインパクトという二軸で整理する技法です(PPMみたいですね)。

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ここで注目したいのは、スタートアップ企業での「補完技術」や「周辺技術」の取り扱いです。

当社もそうですが、基本的にプロダクト系のスタートアップには「コア技術」っぽいものがあります。技術的も先進的で、それが他社の追随を許さないことで競争優位に繋がっている、と。

でも、それは多分幻想だと思うんです。技術的には先進的であっても、それがそのまま競争優位であることは無い、というか、それは市場が決めることであって、スタートアップの「コア技術」っぽいものは日の目を見ていないわけですから。だからスタートアップの技術は「補完技術」と位置づけて、いかに「コア技術」に持って行くかを考えた方が良い。その為のリソース配分を考えた方が良い。

その時、何を「周辺技術」と位置づけるかを定義すること。そして「周辺技術」は買う、もしくは、資本力が無ければ「周辺技術」を持つ企業と提携することが大事だろうなと。

この辺のやり方が、ユーグレナ社なんかは非常に上手い。2012年に東京センチュリーリース社などに増資したときは、きっと、設備投資やその際のファイナンススキーム等を「周辺技術」と定義していた気がするんですね。

何か特定の自社技術だけで市場を創出できる時代は終わりました。真の「コア技術」なんていうのはあり得ないし、自社単独で生み出すのは不可能。

結局、プロダクト系のスタートアップにとっては「補完技術」や「周辺技術」しかなくて、その取り扱いや他社との組み方を戦略と呼ぶのだと思いました。

 

イノベーション戦略の論理 - 確率の経営とは何か (中公新書)
 

 

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